滋賀県大津市唐崎にある、全国市町村国際文化研修所(JIAM)で開催された、市町村議会議員研修『新人議員のための地方自治の基本』に参加してきました。

講義とワークショップを含め3日間、びっしりと学んできました。

『新人議員のための地方自治の基本』
・地方自治制度の基本
・元議長が語る「住民から近くて遠い地方議会から近くて近い地方議会」への一考察
・地方議会と自治体財政
・条例と政策の審査・立案
・条例演習(意見交換・発表・まとめ)
・これからの地方議員に期待されていること

大講堂で北海道から沖縄まで120名の議員が参加、皆、熱心に講義を聴いていました。

・地方自治制度の基本(同志社大学 野田遊教授)
地方分権、財政、行財政改革、市町村合併、広域連携、行政編成、自治体議会、自治体組織、ガバナンス、政策、広報と幅広い分野に関して、講師の各自治体の研究と海外事例に触れつつ、講師自身の提言も織り交ぜながら情報量の多い講習が行われた。
特に行財政改革では、地方分権で地方自治体にサービス負担量が増加したことに触れ、地方自治体で賄うことが困難なサービスについては都道府県補完も推進すべきとの提言がなされた。また、広域連携で最も効果が見込まれることとして、都道府県主導による行政システムの統一化も提言された。その他、予算編成の基本や広域連携の例として事務委託や一部事務組合の事例に触れるなど、当選直後の議員に向けて必要とされる内容が多いと感じた。

・元議長が語る「住民から近くて遠い地方議会から近くて近い地方議会」への一考察(福岡県福津市議会元議長 江上隆行氏)
江上氏の体験に基づき20のテーマが論じられた。その中で、国の「骨太の方針」や12月ごろ定まる予算基本方針を把握することが、地方の来年度予算に与える影響が大きいことに触れ、情報を把握していくことが提言されている。また、議会と行政が「車の両輪」であるかと疑問を呈し、どちらの政策が住民の福祉の増進に寄与するかという、両輪というより2台の車が競争する形が本来の姿であるとの論であった。

・地方議会と自治体財政(武庫川女子大 金崎健太郎教授)
民間企業の企業会計と、地方自治体の官庁会計の違いについて、利益確定を見る決算重視の企業会計と、施策設計の予算が主体の官庁会計との解説。現状の単式簿記は予算執行状況の把握に適しているとの見解だった。一方で固定資産台帳の整備はその維持管理計画上で重要との事。

・条例と政策の審査・立案、条例演習(元衆議院法制局参事 吉田利宏)
議会からの政策立案の必要性として、無難になりやすい行政制作に自治体ならではのメリハリ(地域としての特色)をつけていくことが挙げられた。議会提案の条例の例として、法律補完型、部署横断型、新しい価値の提示型、観光振興などを目的としたものが代表例として提示された。
法律補完型は、法で『地方公共団体の責務』『市町村計画策定の努力義務』などが規定されているものは、各自治体で条例制定を想定しているもので、がん対策基本法などが一例にある。
また、地域での問題の解決方法を考えるにあたって必要となる、1.くふうで解決できること、2.予算措置で解決できること、3.条例でしかできないこと、の3点を考える演習も行われた。
その後、条例の条文構成に関する講義を受講後、条文構成に関してワークショップが開催された。6名1組のチームとなり、2件の演習を実施した。
1件目は条文の構成順序について考察、2件目は条文の目的規定の策定を行った。各自で回答を作成後、グループ内でディスカッションを行い、グループの意見をまとめ発表するという形で実施された。
最も重要なことは、模範解答はあるものの、グループディスカッションで出された結論が解であり、その地域の特性を表す条例になっていく、という点だ。

・これからの地方議員に期待されていること(駒沢大学名誉教授 大山礼子)
政治改革に関する特別委員会で参考人として意見を述べた大山氏からは、2つのテーマについて講義が行われた。1つは『多様性のある議会へ』として、議員の多様性、特に女性の議会進出が主に扱われた。多様な議員の参画促進のため、『人を育てる』『立候補支援』『選挙制度見直し』の3点が挙げられ、『人を育てる』『立候補支援』は内閣府がとりまとめた『地方議会・地方公共団体における政治分野に係る男女共同参画の推進に向けた取り組み事例集』をもとに事例の紹介が行われた。『選挙制度見直し』では、女性枠を設けるクォーター制は現行憲法上で不可能である点が解説され、一方で複数名の候補者に投票を行う制限連記制については女性や若い候補者が当選する確率が高まる方式として提示された。
2つめのテーマ『信頼される議員の条件』では、住民の信頼を得るための方法として、報酬と経費の透明化、ハラスメント防止、政治倫理条例、住民との関係構築の4点について事例を交えての講義となった。
報酬と経費の透明化は住民への議会活動への理解促進(議会の露出量増)を図る事が前提とされた。ハラスメント防止に関しては福岡県のハラスメント防止条例を例としてあげられた。政治倫理条例も議会の自浄作業を進めるものとして紹介されている。住民との関係構築は、情報提供から情報共有への意識として、会議情報公開、通年議会による会期外活動の理解促進、住民への情報共有による政策サイクル作りが挙げられた。住民との意思疎通の充実としてモニター制度の事例紹介もあったが、議会報告会も含め、実施後のフィードバックが重要とのことであった。

 

本研修では幅広い観点から議員に必要な内容の講習が行われたと感じている。

特に、吉田講師、大山講師の講義は新人議員に限らず、ある程度の経験を積まれた議員の方にも意義のあるものだと感じた。
こちらの講師陣による講演を聞くことができる機会があれば、多くの議員と参加したい。

 

また、懇親の場では世代の近い議員とも交流を進めることができました。

北海道白老町議会 森山議員

宮城県白石町議会 大内議員、角張議員

愛知県飛島村議会 服部議員

皆のこれからの活躍を期待したいですね。

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