2月17日
2島1村で人口規模も似ている新島へ、小笠原の課題解決のヒントを得ることを目的に視察へ行ってまいりました。
新島へは調布飛行場から30分。航空路のアクセスの良さを痛感します。
強い西風が吹いていましたが、東西に延びる新島空港では影響が少なく、船が欠航でも飛べるとのことでした。
新島視察にあたり、提案した視察目的は下記の項目です。
・災害対策について(災害時の電力、津波対策、津波タワー)
・ゴミ焼却施設、保育園の運営について
・食育推進計画について
・給食センターについて
・地域おこし協力隊の活用状況について
・浄水、汚水処理について
・定住化体験住宅について
・議会運営について
それぞれについて、各担当から説明がありました。
・災害対策について(災害時の電力、津波対策、津波タワー)
新島での津波対策では被害想定800人として避難計画を策定。
そのうちビーチから逃げ遅れ170名として津波タワーを建設。津波タワーは総工費2億5千9百万、年間維持費はないものの、4年目で腐食対策として1千4百万円ほどで補修工事を実施している。
備蓄に関しては4日分とされており、本土から近く比較的早期の救援が見込める地理的要因がうかがえた。
また、避難ルームや簡易ベッドを各地区の備蓄倉庫に配備しており、避難所の運営に関しては、学校や関係者と連携して実施するためのマニュアル整備を行っているとこのこと。
災害復旧に関しては建設業会と協定を結び、復旧用の重機、燃料を確保している。年3~4回の防災会議の中で協議を行っている。
燃料の備蓄は村としては今のところ行っていないが、スタンドの地下タンクに軽油、ガソリンがそれぞれ1000Lあり、津波等でも波が入り込まない構造で取り出せるものとの認識であり、その点を考慮して今後考えていくとのこと。また、高台に防衛装備庁の設備にガソリン等の備蓄が一定程度あるとの話。
電力ライフライン確保には、東電と基本協定を締結し応急復旧対応を行う計画。また、東電が所有している太陽光発電施設を活用し、避難所となる新島中学校・高校に電力共有が行われるように工事が進行中。なお、学校に自家発はあるが備蓄燃料はないとのことであった。
非常用電源として、各地区の備蓄倉庫にポータブル電源と発電機を配備。不足している分をEV車の購入補助により50台以上確保されている。村としても蓄電池を置くことを計画している。式根島への電力供給路が破損し、電力供給が絶たれてしまうことを考慮し、再生エネルギーによる電力確保を検討している。
・ゴミ焼却施設、保育園の運営について
広域連携として、平成18年度から大島と八丈島に焼却灰を埋め立て処理。小笠原村と同様。式根島では平成28年から焼却施設を休止、可燃ごみは新島で焼却。
大島処分場への輸送は年間139トン、240万程度。
式根島からの輸送は238トン、2170万円ほど。メンテナンス費が2千万以上かかっていたため、運搬の方が経済的。
生ごみのたい肥化は実施していない。プラスチック資源などは全て可燃ごみとして焼却。
新島保育園の定員は1歳児5名、2歳児5名、3歳児30名、4歳児30名、5歳児30名の計100名。現状、1歳児2名、2歳児2名、3歳児3名、4歳児10名、5歳児12名の計39名。職員、保育士8名、調理員1名、栄養士1名、用務員1名、調理員3名、保育助士2名。
式根島保育園の定員は1歳児4名、2歳児4名、3歳児7名、4歳児7名、5歳児8名の計30名。現状、1歳児3名、2歳児0名、3歳児0名、4歳児3名、5歳児3名の計9名。職員、保育士3名、調理員1名、栄養士新島兼務、用務員1名、調理員2名、保育助士3名。式根島でも給食を提供。
1,2歳児は就労要件があるが、3~5歳には就労要件は無い。
開所時間朝8時~夕方16時の8時間。延長保育7時45分~8時、16時~17時45分。新島保育園は4~10名程度が延長保育利用。
保育士確保の取り組み
新島でも苦慮、地元採用は難しく、島外採用が主で住宅確保も問題。
優良求人サイトへの掲載、東京都の合同採用試験で募集。昨年は暮らし体験ツアーで保育士、介護職で募集、9名来島し、1名保育士の募集があった。
保育専門学校への募集案内チラシを配布するなど地道に活動。
・食育推進計画について
さわやか健康センター 事務3名、保健師3名、理学療法士1名、管理栄養士1名。民生課の一部で、村の直轄運営。
鎌倉女子大学管理栄養学科の学生の研究で幼児への食文化の伝承に影響を及ぼす母親の食意識についてアンケート。その結果、子供の食意識に習ったこと、教えてもらったことが、自身が保護者になったときに伝承するという結果。村としては全てのお子さんに小さなときから食育を受ける機会を設けたいとの考え。
特に、生涯にわたる食習慣を身に着ける重要な時期として乳幼児の学齢期の子供の取り組みに注力し、将来の生活習慣病の予防に努めたいと考えているとのこと。
食育教室
保育園、小学校で食育講和というカテゴリ授業を持っている。
東京都の区市町村食育推進事業の補助金を使って活動して、健康センターから講師派遣を行っている。
・給食センターについて
新島、式根島それぞれで給食を作成。
予算 材料費1600万、栄養士1名づつ、新島3名+5名、式根島1名+5名の体制。
新島173食、式根島70食を196日のべ47000食を提供。
食材の自給率は新島5%、式根島10%程度。
保育園、福祉施設は別で調理しており、共用していない。
食材は各島の商店が需要に応じてストックし提供。入荷の都合でメニューが前後した事はあるが、提供できなかった事はないとのこと。
・地域おこし協力隊の活用状況について
令和5年度から開始、3名が活動中。来年度で任期となる。
経緯は、観光協会が解散する中で、職員の確保の手段として導入した。
アドバイザーの協力を得て30名の応募の中から3名を選考。
外からの人ということで、島の当たり前がそうでないという目線で指摘、アイデア、魅力発見が期待。一方で、民間の仕事の経験しかないため、役場的な事務の流れを理解いただく点は苦労している。
隊員が島に残る場合には、100万円を支援する補助金を用意している。
観光協会が別途組織されると、担当課としてはその後の活用は考えていないとのこと。
隊員の住宅確保は、東京都の教職員住宅で空きがあったものを活用。1年更新で3年利用の契約。新しい教職員住宅を既に建ててあり、使われる計画は無い住宅。
隊員3名のうち男性1名は親族が島民、消防団活動にも参加し、隊員活動終了後は島で起業と、Uターンの意味合いが強く、Uターン支援に活用できることがうかがえた。
・浄水、汚水処理について
汚水処理については、現在、維持管理業務は民間業者に委託。月1回の来庁で施設管理を行っている。日常の管理業務は委託先が作業を業者に依頼している。2島3地区3施設で一社に包括管理ができないか検討し、維持管理費圧縮を目指している。浄化槽は民生課が管理。下水道接続率が80%。
技術職員の確保については、新島では技術職員は欲しいが、一般職で入庁して一から勉強して担当している。
・定住化体験住宅について
財源は東京都補助事業、島しょ山村地域における移住体験住宅整備事業補助金で、上限1億2千万で1億8千万ほどの建築費となった。430万ほどのコンテナを22個接続して作成。村には空き家バンク制度があるが、移住定住を促進するための空き家が1件も無かったため、移住促進のためにまず建てることを検討したとのこと。建物用のコンテナは島外で作成、設置は島内業者で行った。部屋だけでなく、60㎡のコミュニティ棟も含まれている。建築は大きく時短できた。今後の耐久性は経過を観察していきたいとのこと。
輸送時の破損もあったが、保険でコンテナ業者が対応した。風速50mや雪の多い環境で使われているもので、通常の住宅と同程度の強度という認識。
定住化体験住宅に併せて、単身者向けの職員住宅を同工法で5戸設置。
・クリエート21
平成3年に地域活性化で建てられた施設で、最近は利用のなかった宿泊棟を活用したもの。4つの貸し事務所に村内事業者、村外の事業者も入居している。月額1万5千円と2万円の部屋を提供している。スタートアップ事業で3年が限度、空きがあれば1年単位での更新となる。
・空き家バンク
とにかく空き部屋がない。相続制度の変更による3年以内の相続の義務化によって今後は物件が動くと考えている。村の対応は限界があるが、新島の事情を見た島内事業者が不動産資格を取得し、現在では新島内に3件の不動産屋ができており、民対民で売買が促進されているものと考えている。
島外からの移住者は借家希望だが借家は無い。地主側は売却を希望しており、空き家バンクに掲載すると売買は成立するが、ニーズは借家が多い。
・議会運営について
議員削減の議論もあるが、次の議員の成り手のために何を考えるかを前提に、定数根拠、報酬根拠、議員仕事量などを算出。前提として、開かれた議会が土台に必要。資料共有しながら議論できる環境、連絡手段としてLINE活用、オンライン活用を導入していった。また、村民と一緒に考える会を開催し、課程を共有、村民へ議会に興味を持ってもらうための活動を行った。
議員と一緒にを考える会はオンラインも活用し開催。
・勤労福祉会館
東京都の勤労福祉協会が建設。当初は温浴施設とボーリング場。
役場職員が運営にあたっている。温浴施設だった箇所は乳幼児向けの屋内遊技場に変更し、小さな子供を抱える母親の集いの場になっていた。
新島上陸後、海上模様の不良により式根島への渡島は困難との事で、急遽、新島内での視察先を追加しました。
津波タワーは町の中心地のほとんどが高台から距離があり、住宅地の裏手に高台のある小笠原とは地理的要因が大きく異なるために用意されたものであることが確認された。船客待合所の屋上部分の避難所化も新島、八丈島などで見られたが、小笠原で必要か否か建て替え時の検討材料としたい。
ゴミ焼却に関しては、分別、リサイクルに関しては小笠原の方が取り組みは進んでいると感じた。生ごみのたい肥化等の減容の知見は得られなかった。
保育園に関しては、保育士の定員、施設の大きさ、開所時間など小笠原に比べると手厚い体制であると感じた。
食育の推進に関しては、さわやか健康センターが果たす役割について知る事ができた。
処理場に関しては、委託先業者が月1回程度の来庁で済んでいるとのこと。
浄水に関しては、議長会でも東京都による水道一元化を要望しているとのことで、東京都による管理は今後も他島と連携して要望したい。
移住定住促進住宅について、活用された工法は住宅建築費用高騰の小笠原での活用の参考としたい。世帯向けの民間アパートが小笠原にはほぼ無いことから世帯での移住が困難だ。しかし、都制度を活用して世帯での移住者向けの住宅の整備の可能性を感じた。空き家バンクについては、不動産屋の無い小笠原で一定の需要はあるものと考える。スタートアップ支援用の廉価な事務所スペースは、小笠原での起業支援に役立つ可能性は高いが、物件の確保が課題。
給食センターについては、管理栄養士1名の確保が課題とのことであった。小笠原で給食を考える際には、同じ課題が発生することを念頭に研究していきたい。
地域おこし隊は新島では限定的な仕事の形、用途であったが、Uターン受け入れ先としての可能性が感じられた。その制度等については研究をし、住居については民間(NTT)のシェアハウスが完成するタイミングが近々あることから、人手不足の小笠原でどのように活用できるか検討していきたい。
議会運営については、小笠原でも議員報酬の改定について議論が始まったところであり、開かれた議会の有り方、報酬算定方法について参考としたい。
海況不良の影響で式根島への渡航は叶わなかったが、新島村政の多岐に渡り見識を深めることが出来ました。今後の活動に活かし、村民へ還元していきたいと考えています。
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